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週刊介護情報(H27.12.11)第169号

2015-12-16

◆一億総活躍社会の実現に向けて「特養の増床」を提言
“介護の力”を加速させるための課題集約―全国老施協 

 

――公益社団法人全国老人福祉施設協議会(老施協)

特別養護老人ホーム等を運営する社会福祉法人で構成される公益社団法人全国老人福祉施設協議会(老施協)は、政府が目標として掲げている「介護離職ゼロ」に対して独自の提言「一億総活躍社会の実現に向けて」を発表した。12月4日に発表された厚生労働省の「2016年(平成28年)度診療報酬改定に向けた基本方針案」と比較すると多くの共通項も浮かび上がってくる。

また、老施協へ向けた直接的な発言ではないが、塩崎厚生労働大臣の「介護離職ゼロ」を実現することで、「1億総活躍社会」につなげていくとした政府の緊急対策についての記者会見の模様(要約)も下段で紹介する。政府の緊急対策は50万人分以上の施設などを増やし、特別養護老人ホームの待機者の解消を図るという主旨だ。

労施協の提言は、まず「地域社会・経済を支えるため、介護施設の整備を進めるには、中重度要介護者の受け皿を確保しなければならない」との認識からスタートしている。

(1)「特別養護老人ホームの適正規模化」―ムダなく、ムリなく、効果の高い介護へ(2)“介護離職ゼロ”を支える「介護現場の離職ゼロ」、(3)「強い介護基盤が強い地域をつくる」―-とした3点が施策の柱として据えられ、最終的には現場職員の人員配置基準の見直しや、外国人労働者の積極的な活用にも言及している。

 

▼老施協が示した提言の概要

3本柱の施策を個別にみていくと、「特別養護老人ホームの適正規模化」では、80~100名規模の従来型特養施設を最適正基準として、現状で50名(30名以下除く)以下となっている特養施設の増床を提案していくことを第一に主張し、第2に、小~中規模の新規施設整備に比べ、約35%程度の費用軽減効果が見込まれることに加え、枯渇が懸念される介護人材についても生活相談員、機能訓練指導員、栄養士等の専門職の人員配置基準は定員100名まで同一数の配置となることから、マンパワーの面からも、よりムダなく効果的な運営が可能であると主張している。

“介護離職ゼロ”を支える「介護現場の離職ゼロ」としては、介護者家族の負担を軽減する観点から、安定した福祉運営の源泉たる「介護職員の離職」を防ぐことが、巡って介護離職者の減少にも繋がることを訴えた。

さらに「強い介護基盤が強い地域をつくる」として、各地域で進められる介護事業と一体となった都市・地域開発計画などを引き合いに出し、確固とした介護基盤が地域の将来的な発展にも寄与するものであることを示していた。

 

塩崎厚労相、介護職員の処遇改善は「加算で進めてきた」

塩崎恭久厚労相 11月27日 、閣議終了後の記者会見に臨んだ。2020年代初頭にかけて新たに50万人分以上の施設などを増やし、特別養護老人ホームの待機者の解消や「介護離職ゼロ」を実現することで、「1億総活躍社会」につなげていくとした政府の緊急対策。塩崎厚労相に対して、記者団から「拡充する介護サービスを支えられるだけのマンパワーをどう確保していくか」という質問が飛び、これに対しての返答を行った。

塩崎厚労相は、現場を離れた介護職員の再就職を後押しすることや、日々の業務でこなすべき書類を半減して負担を軽くすることなど、緊急対策に盛り込んだメニューを紹介。「総合的な対策で万全を期していきたい」と語った。

一方で、人手不足を解消するためには欠かせないと指摘する声が多い処遇の改善については、「介護報酬改定で加算を設け、できる限り活用してもらおうということで進めてきている」と説明。「処遇も大事だが職場環境や仕事の負担感の改善も非常に大事」「財源が必要になる」などと述べるにとどめ、さらなる賃上げに向けた待遇改善取り組みやお金をひねり出す原資への言及は出なかった。

 

◆平成30年度同時改定、地域包括ケアシステム構築に焦点
厚労省、平成28年度診療報酬改定の基本方針を提示

 

――厚生労働省

厚生労働省は12月4日、社会保障審議会の医療部会を開催し、2016年度診療報酬改定に向けて「基本方針案」を示し、医療部会はこれを了承した。近く正式決定する運び。この基本方針案は、▼超高齢社会における医療政策の基本方向、▼医療機能の分化・強化、連携に関する視点の2点が柱。

なお方針案は12月2日の社会保障審議会医療保険部会で示されたものと同じ。また、医療部会では11月19日に開いた前回会合で、基本方針の骨子案が示されていた。両部会はともに了解した。基本方針は、社会保障審議会の「医療部会」と「医療保険部会」で討議され、12月上中旬には策定される見通し。

基本方針案は、1.改定にあたっての基本認識/2.改定の基本的視点と具体的方向性/3.将来をみすえた課題――を柱とし、骨子案と比較して文言の書き換えがあるが、同じ内容。

診療報酬改定について、現在は(1)社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で基本方針を策定する。その次に(2)予算編成過程で内閣が改定率を決定する。これを前提に(3)中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的な内容を審議する――という進行で役割分担が決まっている。

 

2016年度診療報酬改定の基本方針(本文)

1.改定に当たっての基本認識

(超高齢社会における医療政策の基本方向)

 

(地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築)

 

2.改定の基本的視点と具体的方向性  

(1)地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点

【重点課題】 (基本的視点)

 

(具体的方向性の例)

  1. (ア)医療機能に応じた入院医療の評価・効果的・効率的で質の高い入院医療の提供のため、医療機能や患者 の状態に応じた評価を行い、急性期、回復期、慢性期など、医療機能の分化・強化、連携を促進。
  2. (イ)チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務効率化の取組等を通じた医療 従事者の負担軽減・人材確保・地域医療介護総合確保基金を活用した医療従事者の確保・養成等と併せて、多職種の活用によるチーム医療の評価、勤務環境の改善、業務効率化の 取組等を進め、医療従事者の負担を軽減。
  3. (ウ)地域包括ケアシステム推進のための取組の強化・複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理 等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた 診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価。
  1. (エ)質の高い在宅医療・訪問看護の確保
  1. (オ)医療保険制度改革法も踏まえた外来医療の機能分化

 

(2)患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を 実現する視点

(基本的視点)

 

(具体的方向性の例)

  1. かかりつけ医の評価、かかりつけ歯科医の評価、かかりつけ薬剤師・薬局の評価・ 複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者 に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能 を評価。(再掲)・患者の薬物療法の有効性・安全性確保のため、服薬情報の一元的な把握 とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価。(再掲)
  2. 情報通信技術(ICT)を活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進・情報通信技術(ICT)が一層進歩する中で、患者や医療関係者の視点に立って、ICT を活用した医療連携による医療サービスの向上の評価を 進めるとともに、医療に関するデータの収集・利活用を推進することで、実態やエビデンスに基づく評価を推進。
  3. 質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進・質の高いリハビリテーションの評価など、アウトカムにも着目した評価を進め、患者の早期の機能回復を推進。

(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点

(基本的視点)

 

(具体的方向性の例)

○ 上記の基本的視点から、以下の事項について検討を行う必要。

  1. (ア)緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
  2. (イ)「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療の評価
  3. (ウ)地域移行・地域生活支援の充実を含めた質の高い精神医療の評価
  4. (エ)難病法の施行を踏まえた難病患者への適切な医療の評価
  5. (オ)小児医療、周産期医療の充実、高齢者の増加を踏まえた救急医療の充実
  6. (カ)口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進
  7. (キ)かかりつけ薬剤師・薬局による薬学管理や在宅医療等への貢献度による評価・適正化
  8. (ク)医療品、医療機器、検査等におけるイノベーションや医療技術の適切な評価等

 

(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点

(基本的視点)

(具体的方向性の例)

  1. (ア)後発医薬品の使用促進・価格適正化、長期収載品の評価の仕組みの検討